劇場公開日 2026年10月2日

ファーストボイス : インタビュー

2026年10月2日更新

綾瀬はるか主演、前田哲監督作「ファーストボイス」が、10月2日から全国で封切られる。バブル経済絶頂期を舞台に、100%負けると言われた日本初のハラスメント裁判に挑み、時代の「常識」に挑んだ女性たちの姿を描く今作で人間味と愛嬌と力強さを兼ね備えた主人公・朝日道子に扮した綾瀬、依頼人・上原恵を体現したファーストサマーウイカ、新人弁護士・藤野栞を担った松本穂香に話を聞いた。(取材・文/映画.com編集長 大塚史貴、写真/間庭裕基)

【ストーリー】
日本が好景気に沸いていたバブル期。お人好しで困った人を放っておけずお金にならない案件ばかり受けてしまう弁護士・朝日道子のもとに、上原恵という女性が訪ねてくる。職場で執拗な嫌がらせを受けた末に大好きな仕事まで奪われた彼女は、会社と上司を相手に訴訟を起こしたいという。「ハラスメント」をめぐる裁判には前例がなく、新人弁護士の藤野栞は「勝ち目がない」と反対するが、朝日は「この裁判は必ず未来につながる」と立ち上がることを決意。世間の“常識”という大きな壁に風穴を開けるべく、勇気ある一歩を踏み出していく。

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――バブル期が主舞台になります。皆さんにとって馴染みのない時代であったり、まだ生まれて間もなかったり、生まれていなかった時代だと思います。脚本を読んでみて、率直にこの時代についてどう思われましたか?

綾瀬:こういう時代ってあったんだろうなって。衣装やヘアメイクも含めて、よく映画やテレビで見かけたことがあります(笑)。

松本:衣装とヘアメイクがとにかくかわいかったですよね。そこで時代を感じられて。

ウイカ:信じられないなと思いました。つい30数年前の話じゃないですか。常識がこんなにも違ったんだと思って、びっくりしました。

松本:確かに。

ウイカ:この時代に生まれていたら、自分の性格も違ったのかな(笑)。

綾瀬&松本:(笑)

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――劇中で綾瀬さん扮する朝日道子弁護士が「始めてみなければ始まらない! レッツ・ビギン!」と前向きな発言が印象的です。何事も最初の第一歩が肝心という意味合いがあると思いますが、ご自身の経験則でこのマインドと合致するような言動や出来事ってありましたか?

松本:何も考えずに飛び込めるタイプですか?

綾瀬:私、結構怖がりかもしれません。

ウイカ:飛び込みそうなタイプ(笑)。

綾瀬:ポン!って飛び込める。ただ「え、そこへ行くのにこっちには行かないんだ」って友人にはよく言われますね。「そこをそんなに心配するの?」みたいな。

ウイカ&松本:へえー!

松本:じゃあ、朝日先生とはちょっと違うんですね。

綾瀬:朝日先生は本当に前向きですよね。逆境を前に盛り上がっちゃうタイプ。「ワクワクしてきたわあ!」とか言っちゃうし。本当にいろんなことを前向きに変える力がある人だと思います。

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ウイカ:私は比較的飛び込める性格ではあるんですが、失敗を恐れたり学んでしまうと、立ち止まったりしてしまう。ただ年々、「自分だけのせいじゃない」って思えるようになってきたかも(笑)。うまくいかなくても「まあ、そういう流れだった」とか「みんなでやってダメだったんだから仕方ない」と、自分だけの責任だと思い込まない方が心が軽くいられる。年々図太くなっていることで、行動しやすくなってるんじゃないかなと思っています。

松本:私は、日常の些細なこととかでもたくさんあると思うんですけど、「ああ、掃除するの面倒くさいな」みたいなことって誰にでもあるじゃないですか。でも始まらないと終わらないから、「レッツ・ビギン!」ですね(笑)。

綾瀬:まずは始まらないとね(笑)。

松本:朝日先生の「レッツ・ビギン!」、色々なところに活用できるんじゃないでしょうか。

ウイカ:セリフを覚える時とか。「(台本を)開かなきゃ」みたいな(笑)。

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――現場には色々な世代のスタッフが集まっておられまずが、スタッフから「あの時代はこうだったんだよ」といった説明や共有はあったりしましたか?

松本:この時代はこうだったよって、監督が色々と言ってたような気がするけれど……。ただ、それが何なのかは思い出せない(笑)。

ウイカ:「レッツ・ビギン!」は当時流行った言葉? 朝日先生の言葉?

綾瀬:監督が考えたって……。

ウイカ:考えた言葉?

綾瀬:監督が考えたっておっしゃってて、でも何かで「やっていましたよ」って言ったら、「ほんまかいなー」って(笑)。

ウイカ・松本:(笑)

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――包み込むような温もりが作品にもあるからこそ、社会的なテーマの作品を定期的に発表できているんでしょうね。皆さんが現場で目の当たりにした、監督の魅力が伝わる一コマはどんなものでしたか?

綾瀬:ありすぎてね(笑)。

松本:ふふっ(笑)。

綾瀬:現場をいつも盛り上げてくださるように、冗談とか、声かけとかすごいしてくださっていて、優しい監督でした。

松本:大きな声で「ローリン!」って言ってくれる(笑)。

ウイカ:「テープ回して」ってことですね。

綾瀬:基本的に全て現場でお芝居を見るスタイルでしたから、見守ってもらっている感覚でした。また、決断も早いしテンポも良い方なので気持ち良かったです。

ウイカ:地方での撮影が多かったんですが、監督は靴を6足くらい持ってきていました(笑)。

綾瀬:(爆笑)なんでそんなに(笑)。

ウイカ:スニーカーの日もあれば、革靴のときもある。基本オシャレで、子役に「怖い監督だ」と思われないように明るく楽しげな服を着る気遣いもされていて。監督でそこまでする方、聞いたことないなと思って(笑)。そこに一番驚きました。細やかなところまで気を遣える方ですね。

松本:そんな監督と、ほんわかした綾瀬さんとのやり取りが見ていて楽しかったです。プチ漫才みたいなのが毎日繰り広げられていました。

ウイカ:すれ違い漫才みたいなことが結構あって面白かった。お互いが話を聞いていなくて、ずっとすれ違っているのに、なんか成立してるみたいな時が面白かったです(笑)。

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――その光景が目に浮かびます(笑)。今やハラスメントという言葉を聞かない日がないくらい取り沙汰されています。今まさに取り上げるべき題材とも感じましたが、世間の常識は実に曖昧だなと改めて認識させられました。皆さんがこれまでに疑問を感じた世間の常識って何か挙げられますか?

ウイカ:私はSNSをよく見るんですが、最近の世の中ってあるニュースに対して最初はある人を一方的に攻撃するくせに、続報でまた違うものが出たりすると急に手のひらを返したりする。

綾瀬&松本:うんうん。

ウイカ:たったひとつの情報で、簡単に流れが変わっていく。それが正しいかどうかも分からないのに、昔よりも情報がコロコロ入れ替わって、正義と悪すらも簡単に変わっちゃうのが「何も信用できない」という気分になりますよね。自分の目で見て感じたことの大事さが昔より一層、強まった気がします。

松本:すぐ信じちゃいますよね。そこが怖いなって私も思います。自分自身でもニュースを見て「ええ?」って信じそうになってしまうこともあるので、そこも怖いですよね。

綾瀬:確かに仰っる通りですね。こういう職業だからというのもあるんでしょうが、真実が何かなんて分からないのに「なんでそんなに勝手に書けるんだろう?」と思うことはよくあります。

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――ありがとうございます。皆さんそれぞれのパートで他の共演者の方々との芝居場がもちろんありましたが、お三方が現場で対峙してみて手ごたえのあったシーン、忘れられないシーンってありましたか?

ウイカ:女性弁護団のパワフルさ、キャラクターの濃さ(笑)っていうのは、この物語のひとつの見どころといえるかもしれませんね。かなり濃いメンバー(笑)。あと、敵チーム! (ウイカが扮した)恵からしたら相手側ですが、ちょっとニヤッとする工藤阿須加さんの嫌な顔とか(笑)。

松本:あれ嫌でしたね(笑)。

ウイカ:普段はすごくお優しい方なんですけど、やっぱり対峙すると怒りがこみ上げてくるような表情されていて(笑)。そこも注目ポイントだなと思ってます。あと、朝日先生のお母さんの姿がすごく好きでした。

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綾瀬:あ、お母さん姿に(笑)。

ウイカ:そうそう。荷物持って子ども達と出かけるシーンとか。

松本:好きなシーンは、たくさんありますね。みんなでおにぎりを食べているところも好きです。

綾瀬:わたしはカフェで3人で会うシーンかな。

松本:「すみませんでした」って謝罪するシーンですね。結構好きです。

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――本編中で「女の幸せも諦めなかったってことですか?」という問いに対して、「女の幸せって何?」という対話がありました。「女の」「男の」という冠を取っ払ったうえで、役者としてキャリアを構築してきた皆さんにとっての「幸せ」って何ですか?

ウイカ:役者としても、自分自身としても、「強制されないこと」「選択できること」が一番幸せだなと感じます。誰かに強制されることがないというのは幸せなことだと思うし、「どっちが良いですか?」とお弁当を選べるのも幸せなことです(笑)。

松本:私はご縁を感じた時に、幸せだなと思いますね。また同じ監督さんとお仕事できたり、なんかそういう瞬間がすごく幸せです。

綾瀬:私はお仕事で人に会ったり、お仕事や役を通して学ぶことが多いと感じています。役者というお仕事があるからこそ、その積み重ねで自分自身ができあがっていっているのかなと思います。

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