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普通河川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

普通河川(ふつうかせん)とは、一級河川、二級河川、準用河川のいずれでもない河川(法定外河川)のことで、河川法の適用・準用を受けていない。

市町村が必要と考えれば条例を策定し管理している。管理者は市町村長である[1]。

普通河川は、法定外公共物である。

概要

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学説では、 「河川法や下水道法など河川管理に関する特別法の適用ないし準用のない河川(これと接続する湖沼を含む)、 運河、公共用悪水路、堀、堤塘[2]等を総称」 したものとしている[3]。ただし研究によれば、青線(青道)[4]のほか、 川敷や湖底等が公共団体または私人の所有に属する河川、湖沼、溝渠、溜池等のうち、公共用物である普通河川や溜池 等から、脱落地たる河川や公共用悪路、溜池等も、私川または私有(私的所有権)との確証のない公共用物たる河川、溜池等も含まれるようである[5]。

東京都建設局河川部でも、1955年(昭和30年)以降の文書では「水路(普通河川)」、昭和50年代になると「公共溝渠(普通河川)」と云ったように、用語や語法の混用があることが知られる[6]。

普通河川はまた、天然河岸である自然の川、自然な状態の河岸つまり人工的に改修されていない河岸、源流など河川区域・管理区間外となる河川の最上流部の区間などの「公共の水流又は水面」で、河川法の対象外におかれる公共物としての河川[7]も該当する。ただし普通河川は用語として、河川法上の「河川」に該当しない河/川の一般的な俗称であり、法律上の用語ではない。河川法に基づいて指定されない水路のうち、下水道法等、他の法律によって指定されたもの以外の水路を一般的に普通河川と呼んでいるにすぎない[8]。

「普通河川」の語自体は、河川法には第100条の二で、「一級河川又は二級河川の指定があつた場合において、市町村が所有する当該一級河川又は二級河川の用に供される土地」において、一級河川、二級河川及び準用河川以外の河川を「以下「普通河川」という。」と使用されている。第100条の二の内容は、その用に供するため、第100条の二第3項又は国有財産特別措置法(昭和二十七年法律第二百十九号)第五条第一項第五号の規定により、市町村に譲与されたものに限られるが、「当該土地が当該一級河川又は二級河川の用に供されている間、国に無償で貸し付けられたものとみなす。」としたものである。 また同法第100条の二第3項とは、国土交通大臣が、一級河川、二級河川又は準用河川の指定が廃止された場合において、市町村が当該一級河川、二級河川又は準用河川の用に供されていた国の所有する土地を、引き続き普通河川の用に供しようとするとき、当該土地について、国有財産法第二十八条の規定[9]にかかわらず、当該普通河川を管理する市町村長の統轄する市町村に譲与することができるとする、としているものである。

なお、普通河川等の (旧) 法定外公共物のうち、里道と公共用水路等として、現に公共の用に供されているものは従来、国土交通省 (旧建設省) 所管の 国有財産であると解されてきたが、これらは2000年(平成12年)4月1日から2005年(平成17年)3月31日までの間に、市町村に譲与。里道とともに普通河川については、 「水路」 や 「里道」 のうち、道路法や 河川法、下水道法の適用もしくは準用のないもので、現に公共用物として機能としており、地盤の所有権が国に属するもので かつ旧建設省所管のものが、譲与の対象となった[10]。また、 (旧) 法定外公共物には、従前は海岸法の適用のない一般海岸も含まれるとされてきたが、これらは1999年(平成11年)改正後の海岸法にいう一般公共海岸として管理されることとなった[11][12]。

普通河川に関しては、当該市区町村が条例を定めて管理することが一般的であり、条例に違反となれば取り締まりの対象となる。例えば、2025年に閉園した札幌市南区の民間動物園ノースサファリサッポロは、園付近の普通河川・滝の沢川上流に取水管を設置、下流にある園内に向けて川の水の一部を無許可で取り込んでいたため、札幌市が定めている市普通河川管理条例違反とみられている[13]。ただし、条例を定めなくても管理行為ができるとする有力な見解もあり、また実務上からも、条例の制定を行っていない地方公共団体もある[14]。そして、定められている条例の形式についても、最も多いと考えられるのは「法定外公共物管理条例」として、他の法定外公共物とともに制定している条例で、法定外公共用財産管理条例等の名称が用いられることもあったりする[14]。東京都23区内であると公共溝渠管理条例という名称を持つものも多い[15]。 横浜市では、市内の用悪水路・開水路など法定外水路、つまり普通河川のこれらを下水道条例で一般下水道に規定して管理している[16]。

地方公共団体が条例を以て管理について定める外は、市町村や水利組合、土地改良区あるいは地主等が事実上管理しているにすぎず、管理上の責任が明確でない[7][17][18]。

そして、日本全国で残されている城・城跡の内堀は、城の防御施設として人工的に築かれた史跡(水域)であるが、例えば、皇居のお堀(内濠・外濠)は、環境省が管理する皇居外苑という国民公園内の国の史跡「江戸城外堀跡」であるが、外堀川(姫路市)は姫路城の外堀で、城の東側から市街地へと流れて、市街地北東の野里上野町付近で分流する最上流部が、普通河川北条川として扱われている。ただしそこから南下し、城の東側を通る過程で途中、二級河川へと区分変更になる。実は城下町の惣堀、お堀端の水路、天守閣のすぐ周りにある内堀などは、準用河川などに指定し、予算をつけて管理等を行っていることが多いが、城下町全体を大きく囲んでいた外堀、総構えの跡や、そこから伸びる生活・農業用の給排水路跡は、市町村が管理する都市下水路つまりは普通河川としてひっそり残っているケースも全国に多数みられる[19]。

河川とつながる公園内の池についても取り扱いは様々で、井の頭池は井の頭恩賜公園という都立公園の中にある施設(池)であるため、日常の水質管理(掻い掘り等)、ボート場の運営、周囲の護岸や樹木の維持管理は、東京都建設局公園緑地部の出先機関である西部公園緑地事務所が管轄。一方で、井の頭池は神田川の源流であり、河川法上は神田川の起点(上流端)として登録。水元公園にある大池の小合溜は、もともと古利根川を堰き止めて造られた溜め池・小合溜井で、公共溝渠・普通河川扱いであったが、1997年(平成9年)に公共溝渠から準用河川に指定し、これによって河川水を導入した浄化を実施している[20]。

普通河川の中には古川(秋田市)のように仁井田地区や牛島地区など、湿地から宅地化した住宅地を通り、豪雨による浸水被害も多発するため、排水機場の整備や河川カメラの導入など、総合的な治水対策が進められている河川もある[21]。この川は住宅地を通って北上し、雄物川や猿田川へ注ぐ延長約9.6キロメートルの水路であるが、秋田平野や雄物川周辺の低地は、もともと蛇行した川の跡(河跡湖)や湿地帯が多く、宅地化が進む前は周辺の農業排水や小規模な水路として機能し、その名残や規模の面から、主要な大河川である一級河川・雄物川などの支流・水路扱いとして、普通河川にとどまっている[22]。広島市などでも、都市化が進んで普通河川でも豪雨のたびに溢水などの浸水被害を発生させるため、緊急性や他事業との関連などを考慮しながら河川改良を行う必要性が生じている[23]。

有名な普通河川

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  • 高瀬川(京都市)
  • 二ヶ領用水の一部(川崎堀、渋川、等(川崎市))
  • 千川上水(東京都) - 例えば玉川上水は、水道原水の導水路等が機能する東京都水道局管理の水道施設(原水導水路、素掘り開渠と一部閉渠)、埼玉県へと分水する野火止用水も水路であるが[24]、同じく玉川上水から分水する千川上水は、国有財産(法定外公共物)なので普通河川である。普通河川は、条例を設けたりするのは市区町村であっても、その管理をどの公共団体がするのかは法律上の明確な規定がなく、このため千川は財産・機能管理ともに東京都建設局が行っている。都は千川についても2006年(平成18年)に開渠区間を関係区市に譲渡しているが、暗渠部は老朽化が著しく、さらに都道下に位置すること等から関係区が譲与を保留しており、現状でも財産・機能管理ともに東京都の直接管理となっている[25]。このため東京都などは原則として市区町村管理とされていたが、管理条例を有しない場合は、国有財産法に基づき、知事管理としていた[26]。
  • 琵琶湖疏水の一部(京都市他)- 琵琶湖から分流する琵琶湖疏水のうち、蹴上から分岐する疏水分線は、志賀越道を横切る付近で水路の所管が、京都市上下水道局から、京都市建設局に変わる。それが正式な疏水分線の終点で、後は都市河川の扱いとなる[27]。京都市は普通河川のうち、流路延長概ね3キロメートル以上で、下流端で一級河川(同一河川名は除く)に接続するものを「主要普通河川」と呼んでいる[28]。

関連項目

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脚注

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  1. ↑ “これだけはぜひ!河川管理の基礎知識”. 川の基礎知識. 大分河川国道事務所. 2020年8月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月26日閲覧。
  2. ↑ ここでの堤塘 (堤塘敷, 土揚げ敷) は一般に公図上には河川・水路の両側に長狭線で描かれているもので、二線引畦畔と同様に無着色あるいは薄墨色に着色された無番地の土地として表示されている。 こうした堤塘の多くも、もとは (旧) 法定外公共物である。
  3. ↑ 例えば、原龍之助:公物営造物法 [新版] (有斐閣, 1974) 352頁、 寳金敏明:里道・水路・海浜 (4訂版) (ぎょうせい, 2009) 11頁 など。
  4. ↑ ここでいう青線とは、公図上青線を以て表示されている河川、公共用悪水路等のうち、河川法や下水道法等の適用や準用のないもので、その多くが明治初年以来の農業用水路。
  5. ↑ 寳金敏明:里道・水路・海浜 (4訂版) (ぎょうせい, 2009) 11頁
  6. ↑ 例えば、東京都建設局河川部(1961):水路の管理事務の特別区移管調書、建設局河川部(1981):二級河川の指定の廃止又は変更について(建設局河川部長名)昭和56年5月20日、等
  7. 1 2 水法論序説―とくに国有林野上の普通河川をめぐって―
  8. ↑ 測量用語>普通河川(ふつうかせん) 東京都測量設計業協会
  9. ↑ 普通財産の譲与に関する規定。かつて公共用財産としてたものが用途廃止され、普通財産となった際に、その元々の持ち主などに財産を譲与する場合の条件を定めている。
  10. ↑ 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律113条、国有財産特別措置法5条1項5号
  11. ↑ 建設省財産管理研究会編:地方分権と法定外公共物 (ぎょうせい, 1999)
  12. ↑ 公共用財産管理研究会編:法定外公共物の譲与 (ぎょうせい, 2001) が
  13. ↑ ノースサファリサッポロ、河川条例違反か…アザラシやビーバー飼育に川の水を無断使用の疑い 読売新聞 2025/10/28 08:04
  14. 1 2 ぎょうせい:長狭物 維持・管理の手引き―自治体による旧法定外公共物の運営 (ぎょうせい,2005年, 加除式) 188頁。
  15. ↑ なお、公共溝渠とは、一例として江東区は 「溝渠及び堤塘, 護岸, 土揚敷その他これに附属して一体をなす施設 (以下堤塘以下を 「附属物」 という。) であって一般公共の用に供せられているものの総称をいう。」 と定義している (江東区公共溝渠条例2条)。
  16. ↑ 水路(一般下水道)の占用 横浜市泉区
  17. ↑ ただし、京都市の普通河川で幼児が水死した事件について、最高裁1984年(昭和59年)11月29日判決では、市で条例が制定されていなくとも、事実上市が管理している場合には、地方公共団体としての京都市が国家賠償法二条一項の負任を負う公共団体にあたる、としている
  18. ↑ 用排水路として利用されている国有無籍地は、国の立場からは国有財産法の適用があり、公共用財産つまり普通河川として管理され、地方公共団体の立場からは地方自治法に基づく行政事務条例が制定され、公物管理がなされている場合もあるが、こうした状況でも、いずれの機関においても施設台帳や図面等その範囲を確定し得るような資料が整備されていない場合が多い。これは改良区や水利組合が管理者になっていても、所有権がないためで、境界確定等の権限も及ばないことがあるためである。(農業用排水施設管理の法的諸問題、『水利科学』15巻4号、1971年)
  19. ↑ Creation of a Castle Town, and Yonago River as the Outer Moat Creation of a Castle Town by Reclaiming Paddy Field
  20. ↑ 水元公園マネジメントプラン(案)
  21. ↑ 普通河川古川の河川カメラの映像を配信しております 秋田市
  22. ↑ 秋田平野形成の驚きのしくみ!地下に昔の雄物川の流路があった!? まっぷるトラベルガイド編集部
  23. ↑ 広島市の河川改修事業 広島市
  24. ↑ 「準用河川・普通河川及び野火止用水」
  25. ↑ 東京都管理河川の特別区移管と管理変遷 令5.都土木技術支援・人材育成センター年報
  26. ↑ 東京都内では、特別区は公有水面、公共溝渠として管理していた。公共溝渠とは、「公共溝渠の認定標準」によれば、幅1.5m未満の在来下水路(組合水路及び水道局関係水路を除く)を云う。
    地方分権一括法(地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(1999年(平成11年)法律第87号))の施行(2000年(平成12年)4月)以降は、特別区内に存した水路・普通河川 等は区市町村に譲与されたため、地方自治法(1999年(平成11年)改正法律第105号)第281条に定める自治事務として、区市町村が機能管理・財産管理ともに行っている。
  27. ↑ 鴨川真発見記 平成26年1月 京都府
  28. ↑ 主要普通河川 - 京都市
  29. ↑ 山梨由貴・轟慎一 (2023-2024) 三島市街地の湧水河川における河川別特性からみた空間構成と人々のかかわり、ランドスケープ研究/87巻5号